2013年2月1日金曜日

実施設計のまとめ・市民説明会

「市民ホール」の建築本体の実施設計が終わりました。
そこで、4回目の市民説明会が開かれることになりました。

一昨年行われた「設計プロポーザル」で提案した3つの柱、
1 地上から5m持ち上げる
2 大回廊を設ける
3 空間を使いきる
まで立ち戻って、どのような考えで、どのような設計内容にまとまったのか、
その概要をお話ししようと思っています。

2月9日(土)13:30〜 場所は、三次市文化会館2階大会議室です。
どうぞ、奮って、ご参加ください。





2012年12月6日木曜日

願橋

実施設計が粛々と進むなか、この夏に、新橋「願橋」が開通しています。これで市中心地から馬洗川を渡って「三次市民ホール」に直通するアクセスが整いました。

敷地は、写真中央の、山を背後に控えた一帯です。


2012年5月18日金曜日

「基本設計のまとめ」説明会

基本設計がまとまり、実施設計に入りました。
この機会に、「説明会」が開かれます。
どうぞ、奮って、ご参加ください。

三次市民ホールの設計は、自分としては、はじめて試みた方法で行っています。

はじめて、というのは、
まず、設計の基本的な方針(1.建物を5m持ち上げる、2. 大回廊、3. 使い倒す)を立てて、
それを設計の基盤として、そこに、立場の異なるいろいろな人の意見や予算や法規などの制約を加えていって、
案として、それらがもっとも適切に満たされているような形に調整し、
その上で、それを内包するような「デザイン上の目標」を立て、案を調整する
という方法です。

普通なら、「デザイン上の目標」を、もっと前の段階に立ててしまって、そこに要望などを加えていくのですが、
それでは、場合によっては、「その要望は、デザイン上、ちょっときびしい」という判断もでてきて、
要望と案の間が、ぎくしゃくしかねません。
それで、できるかぎり「デザイン」が出て来る幕を遅らせてみよう、というのが今回の試みです。

だから、今回の方法は、要望と案の間はかなりしっくりと埋まるはずだけれど、
「デザイン」は、正直、果敢な挑戦、になります。
なぜなら、案がそうとう決まった段階で、「さて、これはどういう方向でまとめていったら、いい建築になるのか」
を見つけなければならないからです。

ここ何回か、模型でのスタディをアップしてきましたが、それはその検討の一端でした。

その案がどういうものになったのか、「説明会」では、それを中心にお話しできれば、と思っています。

2012年4月18日水曜日

スタディを支えるもの

模型は、実際にそこに立ったときの目線高さでチェックするもの。
だから、机の上に置いた模型を見るときはしゃがむ。
腰に悪い。
だから時には、床に直接、座る。
そこで、机の上に台を築いて、その上に模型を載せる。
ASKULに支えられている。

2012年4月11日水曜日

模型はボロボロ。

模型を持ち上げて、広場階の構造を検討する。切ったり貼ったりで、模型はボロボロ。

2012年4月9日月曜日

2012年4月5日木曜日

冷たい空間と暖かい空間

ご意見が送られてくるのは、「利用者」の方々からだけではありません。
施設を管理・運営する立場からのご意見もいただきます。
そのひとつは、現在の三次市の「三次市文化会館」を管理・運営されている「株式会社暮らしサポートみよし」からのご意見です。

現「三次市文化会館」は、三次の旧市街に建っています。
1973年の竣工ですから、今年で築39年。
建物の老朽化、耐震性への不安、駐車場の狭隘などなど、いろいろな理由があって、その会館を閉ざし、新しい敷地に新築のホールを建てる。
その新しいホールが、つまり、今度の「三次市民ホール」です。
「三次市民ホール」は「三次市文化会館」を発展的に継承するものなのです。

というわけですから、「三次市文化会館」が、今どんなふうに使われていて、そして、どんな課題があるのか、大変に気になるのは自然のこと。

昨年12月14日、ぼくたちは「三次市文化会館」にお邪魔しました。
出迎えてくださったのは、指定管理者としてこのホールを管理・運営されている「株式会社暮らしサポートみよし」の代表取締役社長の上中道夫さんをはじめとする方々で、長時間にわたって、生の声をお聞きすることができました。

さすが、日頃、心血注いで、現場で運営に当たられている方々です。
おっしゃられることの重みが違います。

いちばん苦労されているとお見受けしたのが、最大1186人収容の大ホールの運用のようでした。
大きな公演にはいいけれど、それ以外のときには、光熱費もかかり、なかなか利用率を上げることができない、
小回りが利かなくて困っている、
ということです。

「需要の幅は大都市と変わらないのですが、やはり需要量総量は少ないわけで、大ホールの大ホールとしての利用だけでは、一定の利用率にどうしても達成しないのです。利用率50%が目標なのですが。。。」

そんなところから、「300人、600人、1000人規模で、違和感なく使える工夫がほしい」という具体的な希望をいただきました。つまり、大ホールを、小ホール、中ホールとしても使えるように設計してほしい、ということです。

これは、「使いたおす」ことをテーマにして設計を進めようとしてぼくたちにとって、その考えを後押ししてくださる内容でした。

ご意見はハードにとどまらず、ソフトにも及び、たとえば、

「楽屋」という名称にすると楽屋としての利用しかイメージできなくなるので「会議室」という名称にしています、
あるいは、
「もし劇場機能を重視するなら、芸術創造活動、公演招聘など文化事業促進予算として、市が最低でも1000万円程度の予算措置をとる必要があります、」
というような話が出ました。

たしかに、「三次市民ホール」が、単なる貸し館にとどまるとすれば、とてもさみしいこと。
市民がいて、せっかくの空間があって、そこから自主的な創造活動の芽をどう育てて行くか、は今後の重要な課題です。

3月24日の「住民説明会」にも、「株式会社暮らしサポートみよし」の方々は参加してくださいました。
そして、その後、代表取締役社長の上中道夫さんから直々に、ご意見をいただきました。

現在の案では、ホール1階では4つの出入口があります。後方に2カ所と、前方に2カ所です。
その4つの出入口がぐるり、回廊でつながっています。
そして、館全体の管理事務所が、この回廊の内側にあります。

こういう現状に対して、
この管理事務所の位置を、回廊の内側から外側に出せないか、
というご意見をいただきました。

というのも、公演時には「職員といえども、緊急時以外は、ホールゾーン内にはみだりに入らないのが原則」であり、主催者にホールゾーンを完全に分離して貸せる方がいいからです。

管理の側面から考えれば当然のご意見だと思います。

そしてまた、もうひとつ、
「全体面積に比べ通路が多すぎ」「迷路・死角」が多く、「管理上大きな欠点」となっているのではないか、
というご意見もいただきました。

これもまた、管理の側面から考えれば当然のご意見だと思います。

でも、このあたりがとても難しいところです。

有限の予算と有限の面積のなかで、また管理の側面からだけでなく、一般利用者の側面から、主催者の側面から、さらには、設計者としての提案という側面、といろいろな立場を総合して、そのバランスのなかで、どの立場にとってもよい案をつくらなければなりません。

管理事務室の位置は、たしかに管理の面からすれば「最大値」の位置ではないかもしれません。
しかし、求められる予算と面積の枠内において、日常時の一般利用(そしてこれがこの計画では非常に重要なのですが)のことを考え合わせるなら、この位置は、総合的には「最極値」であると考えています。
もちろん、それをうまく使いこなすためには、客席前方下手出入り口を終演時のみの利用するというような、管理側から言えば、「面倒な対応」が必要になるわけですけれど。

そういえば、ぼくが磯崎新アトリエ時代に担当した「水戸芸術館」には、小沢征爾さんが主席指揮者をつとめる水戸室内管弦楽団を擁するような立派なコンサートホールがあるのですけれど、そのホワイエは専有ではなく、現代美術ギャラリーでのアプローチを兼ねています。
ここでも、管理側から言えば、「面倒な対応」が必要なのでした。

こうした「兼用」は、管理者側からすれば「欠点」であるし、あるいは計画学的に言っても欠点であるかもしれません。
しかし、完全な便利は同時に「冷たい」空間をつくってしまいがちなのです。
むしろ、空間を運用で補う、というようなところから、自然の町のような「暖かさ」が生まれてくるのではないだろうか。
ぼくはそう信じています。

それはそれこそ、死角・迷路をつくらず、見通しが完全に効く空間にしてしまうことが、管理上ではすばらしいけれど、逆に、そこを利用する人にとっては実に居心地悪く、いかに非人間的なことであることか、それを想像していただければすぐに理解していただけるのではないかと思います。

実際、監獄の設計では、いかに死角をなくすが設計の最重要ポイントだったのです。

ぼくたちは、市民ホール全体を、そこでなにかイベントがあるから楽しいというだけでなく、まずは、特段のイベントもないのに、ただそこに居て楽しい、というふうにしていきたいと思っています。

そう、それは、つまり、街路や町並みのような空間です。

まず、空間としてそういう質の空間があって、そこに自然に人々が溜まり憩うことができるようになっていて、
その上で、そこをもっと楽しく使える工夫(ソフト)がかぶさってくる、
それが理想です。

もちろん死角があれば、セキュリティの問題はあります。
ですから今後、家具の配置や空間の工夫によって、それを解決しなければなりません。
できるかぎり、監視カメラを設けるというような方法でなく、解決したいものです。

2012年4月2日月曜日

基本設計最終調整へ

「三次市民ホール建設基本計画策定市民ワークショップ」と「三次市民ホール基本設計住民説明会」が、3月23日、24日に開催されました。

「三次市民ホール建設基本計画策定市民ワークショップ」は、このホールの基本計画を策定するために、昨年の2011年4月からはじまった市民ワークショップです。
昨年度早々の、4月26日、5月20日、6月10日、6月24日と4回のワークショップが開かれ、それを踏まえて「三次市民ホール建設基本計画策定検討委員会」において、「基本計画」が策定されました。
その「基本計画」をもとにプロポーサーザル・コンペが行われ、10月、ぼくたちが設計者に選ばれました。
そういう意味で、この市民ワークショップは、この計画のかなりおおもとにあるものですから、プロポーザル案について一度直接にご意見をいただきたく思い、昨年末、12月19日に、その参加者の方々に集まってもらいました。

議論はけんけんがくがく、きわめて活発で、その内容は、、、「かなり大きな宿題」に書いたとおりでした。

そして、今回が、その「かなり大きな宿題」の提出日。
俎上に載せたのは、(このブログで紹介した)「基本設計素案」。
音響設計を担当している永田音響の小野朗氏からは、音響についての基本的な考え方を説明してもらいました。

、、、、、なごやかな会でした。
基本的には、宿題を受け取っていただけた、のだと思います。

とはいえ、市民ワークショップへ参加されている人には、このホールができたらここを頻繁に利用することになるはずの方々が多いのです。
となれば、ご自身が利用したときにうまく使えるかどうか、それを具体的に想像し、その上での意見が出ます。というか、飛び交います。

その多くはたしかに、大局に立ってのご意見、ではありません。
しかし、設計には、こういう具体的な視点がとっても重要なのです。
立場の異なるいろいろな方の、その立場ごとのシミュレーションを数多く経ることで、案は練られていくからです。

今回、多かったのは「リハーサル室」まわりへのご意見でした。
基本計画では「リハーサル室」という呼称ですが、いまや、どちらかと言えば「小ホール」です。

衣装を着替えたあとに使える(客用ではなく、またゆったりとした)トイレが必要、
大ホール、小ホール兼用のピアノ庫は仕方ないかもしれないが、小ホールでもピアノを頻繁に利用することを考えれば、それらの中間にピアノ庫がほしい、
などなどのご意見が出ました。

翌日の「住民説明会」では、さらに、ワークショップ参加者とはまた異なる立場からのご意見が出ました。
たとえば、

可動パーティションを人海戦術で組むような展示では困る、回廊の現在のヒキでは大きな作品は展示できない、
というような、美術の立場からのご意見。

それから、

大きな公演が開かれるとき、計画上一般利用者との動線交錯するために、全館貸切にならざるを得ない、というようなことが起きないように、
というような、プロデュースの立場からのご意見。

全市の小学生のための公演のとき、全児童と引率の先生が同じ空間で鑑賞できるように、
というような、教育の立場からのご意見。

屋根に登って展望できるようにしてほしい、
というような、より一般的な市民としてのご意見。

外観はどのようなものになるのでしょう?という質問も出ました。

たしかに、外観の説明は差し上げませんでした。
でも、これは仕方ないことと思っていただければ幸いです。

というのも、予算の制約のなかで、面積の制約のなかで、しかし、盛りだくさんの期待を、どう入れていったらいいのか、
そのバランスを、ああでもない、こうでもない、と調整していくだけで、この3ヶ月間、精一杯だったからです。

外観として、三次のこの場所に馴染み、無駄に着飾ったものでないシンプルなものを目指すということについては、最初からまったく変わりません。
でも、案のバランスが少しでも変われば、具体的な外観のつくり方は大きく変ってしまうものなのです。

そしてようやく、案の向かう方向がほぼ見えてきたこの2日間があって、ぼくたちは、計画全体の最終調整に入ることができるようになりました。

外観も含めて、そのなかで、自ずから、計画の全体像が明確になっていくだろうと思っています。

2012年3月21日水曜日

日照時間のこと

三次市民ホールの建設予定地の西側に隣接している住宅地にお住まいの池田雅之さんからメールをいただいています。

市民ホールの建設によって、「朝日がきれいに入る団地」が、「縦にも横にも塞がれ」ることで、日当りが悪くなり、「霧も多く日照時間も少ない」この三次でさらに日照時間が減るのではないだろうか、雪も日陰では溶けにくくなってしまうはずだけれど、そういうことを考慮した案になっているのだろうか、という内容です。

まさにこの懸念は、ぼくたちがこの案を考えるにあたって、最初から配慮してきたことでした。
なにしろ、今度の市民ホールは背の高いフライ(舞台の天井裏のこと)を持つ本格的なホールとして構想されているからです。

演劇などの公演では、舞台美術のセットが途中入れ替わりながら進みます。第一幕は月光に照らされる城、第二幕はカーニバル、第三幕はある夏の午後の麦畑、というような具合ですね。ホールでこういうことを一般的にどうやって実現しているかと言うと、場面展開ごとのセットが舞台の天井裏に吊るされていて、それを下げたり上げたりすることによってです。もちろん、次に出現するセットが丸見えでは困りますから、客席から見て、そうしたセットがちゃんと隠れて見えないようにするために、まず舞台空間の高さと同じだけの天井裏が必要になります。さらに、そうした舞台美術のセット、幕物などの吊り物を上げ下げする機構のための空間に、舞台空間の高さの1/2程度が必要です。つまり、舞台空間の高さの、しめて2.5倍の高さの空間が必要になってくるのです。

こうしたことから、どのホールでも、こうしたフライをどう扱うかがひとつの課題になります。ある人は、フライを覆って、なにか別の形に見せようとします。またある人は、フライだけでなくほかも高くしてフライだけが突出しないようにするようにします。
しかし、こうした方法は、つまりは必要最低限の大きさのフライを外から包み込むわけですから、たしかに形に違和感がなくなるかもしれないけれど、その一方で、現実の日照や視界の遮蔽という点ではマイナスに働きます。
そこで、ぼくたちは、そういういわば「カムフラージュ」ではなく、必要な大きさのフライの形のままで扱うことにしました。

ところで、日照については、都市計画法によって指定された地域ごとに異なる法的な規制があります。
この敷地の場合だと、敷地北側に規制の緩い「近隣商業地域」が広がっていますが、そこを除いた大部分の隣接地は「第一種中高層住居専用地域」です。
「第一種中高層住居専用地域」とは「中高層住居の良好な住環境を守るための地域」のことです。都市計画法で指定される住居系地域は全部で7種類あって、「第一種中高層住居専用地域」は環境への配慮が厳しい方から3番目の地域です。

もちろん、「第一種中高層住宅専用地域」での日影規制を守らなければなりません。

しかし、この日影規制、若干、ややこしいルールです。
まず、敷地の境界線(道路に面するときは、その道路の中心線)から5m外側に線を引きます。この線を敷地一周まわせば、敷地より一回り大きい領域が仮想されます。この領域を「敷地5m外側までの領域」と呼んでおきましょう。
これとは別に、敷地の境界線(道路に面するときは、その道路の中心線)から10m外側に線を引きます。この線を敷地一周まわせば、敷地より一回り大きい領域が仮想されます。この領域を「敷地10m外側までの領域」と呼んでおきましょう。

日影規制は、この2つの領域それぞれについて、それぞれ別の次の条件を満たすことを求めています。
1)冬至の日に、5m外側までの領域で、地面から4m上において、日影になっている時間が4時間を越えてはいけない。
2)冬至の日に、10m外側までの領域で、地面から4m上において、日影になっている時間が2.5時間を越えてはいけない。

一年でもっとも日が低く、影が長い日が冬至です。このもっとも条件の悪い日に、敷地の外にまったく影を落としていけないというのは、いくらなんでも無理な注文ですから、この法律は、こう言っているわけです。
1)もっとも条件の悪い日でも、せめて敷地の外側5mまでは、高さ4mのところで、日が当たらない時間が4時間を越えないようにしなさい。
2)もっとも条件の悪い日でも、せめて敷地の外側10mまでは、高さ4mのところで、日が当たらない時間が2.5時間を越えないようにしなさい。

でもぼくたちは、この規制では甘いと考えました。
理由は、まさに池田さんが書かれていることです。
東側に建物ができれば、日の出の光はどうしたって遮られます。
しかし、(たぶん)池田さんがお住まいの家は「10m外側までの領域」に入ります。
法律は、日照が2.5時間減ることを許します。
しかし、本当にそれでいいのか、と思いました。

それでぼくたちは、法的な規制をベースに、それを自主的により厳しい基準にアップグレードして、それを達成することを目標にしました。その基準というのは、つまり、

もっとも条件の悪い日でも、高さ4mのところで、2.5時間、日照時間が減る場所を、敷地の中だけに留めよう

というものです。
もちろんそうであれば、もっとも条件の悪い日でも、高さ4mのところで、4時間、日照時間が減る場所を、敷地の中だけに留めることができます。

現在の案で、この目標はほとんど達成されています。
ほとんどというのは、(もちろん法規制の許容範囲内ですが)東側、北東側、北西側のほんの一部だけ、敷地境界線を越えているところがあるからです。
(因みに池田さんがお住まいの西側団地に関しては目標をクリアしています。)

この調整、正直なところ、かなり限界に近いところまで来ています。
なにせ、東、西、北とも、もうぎりぎりのところまで来ているからです。

でも、今後も、少しでも目標に近づけるよう努力しようと思っています。

2012年3月6日火曜日

基本設計素案



 
前のブログに、皆さんに「基本設計素案」を見ていただけるのは、おそらく2月の末頃、と書きましたが、だいぶ遅れてしまいました。
今日は、現段階での「基本設計案」をアップします。
ご覧になって気づかれたことやコメントなどありましたら、いつものように、miyoshihall@aokijun.comまでどうぞよろしくお願いします。

基本設計というのは、夢物語や「絵空事」の案ではなく、それをもとに細部を詰めていけば、求められている機能、予算、工期などが実現する、はずの、いわば設計の「原型」のことです。
ここがうまくいっていなければ、その先はうまくいきっこないので、設計のなかで、とても大切な区切りです。

私たちは、去年の終わりほぼ1ヶ月で、ともかく、コンペ案についての意見を皆さんからお聞きしようと努めました。そしてその結果、「かなり大きな宿題」をいただきました。その内容は、12月31日づけのブログ「かなり大きな宿題」にあるとおり。

その後1月、2月とそれを受けて、たたき台案を見直す一方、無理なく予算内で収まるよう、案を調整してきました。
どんな場合でもそうですけれど、多くの方々のご要望を入れていけばいくほど、計画は膨らんでいくもの。
そして、そのままでは、予算を超過するか、質が下がるかです。
だから、あるところでは膨らませながらも、あるところでは身を切る思いで削っていく、という作業が必要になってきます。メリハリをバランスよくつけていく作業、と言ってもいいかもしれません。

どんな調整をしたかと言えば、
1) 雨や雪に濡れずに、道路からまた駐車場からのアクセスできるようにしたこと、
2) 様々な使い分けが可能なよう、回廊を分岐型に変えたこと、
3) リハーサル室を正方形平面から、より使いやすい長方形平面に変えたこと、
4) あまり使い道がないとされた中庭を切り詰めたこと、
5) 全体に渡って、形をシンプルにしたこと、
の5つが柱でした。

*****

三次市民ホールの特徴は、なんと言っても、「空間を使いたおす」ことです。
そのためには、全館が、ひとつのイベントで使われているときからはじまって、特段のイベントがない市民の普段使いのときまで、さまざまなシーンを想定して設計しなければなりません。

「空間を使いたおす」とは、別の言い方をすれば、
 全館利用でもスムーズにさばけ、普段使いでもにぎわいがあるようにする、
 ということです。

そして、残念ながら、そういうことを追求してできているホールはあまりありません。
だから、この両立を本気で求めれば、その空間構成は、多くの人がなんとなく思っている「ホールというのはこんなもの」から離れていきます。
しかし、なにも先入観に縛られる必要もない、むしろそうした結果、「三次にしかないホール」になれば、というのが、私たち設計者の思いです。

「三次市民ホール」が、その意味で、いちばん普通と違っているのは、ホワイエ、ロビーのありかたです。
普通のホールでは、エントランスホール→共有ロビー→ホワイエ→ホール、という順番に空間が並んでいます。
たしかに、これならスムーズに人をさばけます。
しかし、これは大きな公演のときを(だけを?)想定した構成なのです。
なんなら、大きな公演のないときを想像してみましょうか。
ホールはもちろん、ホワイエも閉めることになるでしょうし、共有ロビーだって、開けても、実にさみしい景色が広がるばかりではありませんか。

それに対して、私たちがつくってきた案では、共有ロビーがなく、そのかわり「回廊」があります。そして、それに接するひとつの大広間として「ホワイエ」がつくられます。
大きな公演のときは、エントランス→ホワイエ→ホールとつながります。
しかし、日常的には、エントランス→回廊→ホワイエというルートだけでなく、エントランス→回廊→ホール、というルートができています。
これなら、ホワイエはひとつの部屋として使えます。
ホールもある程度、人数を絞った使い方ができます。

「市民ホール」全体が、回廊を「道」とするひとつの「町」となっているのです。

****

それから、「大ホール」はいろいろな規模の使いかたに対応する、ということにも強い思いを持って、ここまできました。
「大ホール」は、2階席、3階席、4階席の3層の構成。
(1階は駐車場なので、ホールは2階からはじまります。)
全体を使えば1000人のホールです。
2階席だけ使えば、600人弱のホールです。
うち、中通路の前だけを使えば、150人ほどのホールです。

使用の機会で言えば、その間の150人から500人、というのが、もっとも多いはずです。
大ホールを、そういう規模でつかって、音もいいし、雰囲気もいい。
これが、この「大ホール」の設計のなかで、実はとても大切なことです。

「大ホール」が、150人程度の小音楽ホールとして使えることは、「三次市民ホール」にとって、とても大きな意味を持ちます。
なぜなら、150人規模ということでいえば、「三次市民ホール」にはもうひとつ「リハーサル室」があるからです。
「三次市民ホール」は、150人規模の固定舞台と固定客席のある、特に生演奏のコンサートに適した(「大ホール」でもある)小ホールと、同じく150人規模の可動舞台と可動客席のさまざまな用途に使える、(「リハーサル室」という)フレキシブルな小ホールと、異なる性格をもった二つの音響的に優れた小ホールを持つことになるわけです。

「リハーサル室」では、舞台と客席のレイアウトを変えることで、室内楽から規模の小さな管弦楽、またピアノや声楽、民族音楽や伝統芸能、ファッションショー、展示会、物産展、企業展示、格闘技、クラブ・イベント、演劇、ダンス、講演会、式典、パーティ、飲食を伴うライブなど、さまざまな催しの開催が可能です。

大ホールの小ホール使い。
リハーサル室の多目的利用。
こういうことが、「空間を使いたおす」ということの具体的な内容です。

2012年2月3日金曜日

北上市文化交流センター・さくらホール

更新がだいぶ滞ってしまいましたが、もちろん、その間何もしていないわけではなく、昨年の末までにいろいろといただいたご意見を踏まえ、検討を重ねる毎日が続いています。

16日には、前回のたたき台案からの修正方向を確認のため、市役所で打合せがありました。そして、そのときの討議も加えて、さまざまな観点からの検討・調整を進めています。18日には永田音響と打合せ、19日にはシアターワークショップまた空間創造研究所と打合せ、20日には、そこまでの検討での案に基づく概算がはじまりました。127日には、その概算結果を踏まえて市役所で打合せがありました。
そして現在は、以上の作業を踏まえて、「基本設計素案」をまとめているところです。
それがどんな案になるのか、気になることと思いますが、それを皆さんに説明させていただくのは、おそらく2月の末頃になるかと思います。
どうぞ、もうしばらくお待ちください。

ところで、「三次市民ホール」の目指す重要な方向のひとつとして、「空間をつかいたおす」がありました。そして、その点で私たちがかねてより気にしていたホールがありました。
それが、岩手県北上市にある「北上市文化交流センター・さくらホール」です。
実は、その設計に劇場コンサルタントとして関わっていたのがシアターワークショップ、また音響コンサルタントとして関わっていたのが永田音響なのです。しかも、それぞれ担当者まで、「三次市民ホール」の担当と同じ、という偶然。

その「北上市文化交流センター・さくらホール」を、110日、シアターワークショップの伊東さん、小林さん、奥田さんにご案内いただきました。

なぜ、このホールが気になっていたか、と言えば、このホールでは、練習室、スタジオなどが施設の中核を占めていて、それらがまるでひとつの街のような雰囲気を漂わせているからです。しかも、聞くところに寄れば、その街の部分(「アートファクトリー」という名前がついている)に、いつも大勢の人がいる、とのこと。
公演のない日には人影のなく寂しいホール建築が多いなか、どのように「空間をつかいたおす」ことに成功しているのか、やはり、自分の目で見ておきたかったのです。

雪がちらつく寒い日でした。
しかし、たしかに、ミュージックルーム、レッスンルーム、アンサンブルルーム、スタジオ、アトリエなどからなる「アートファクトリー」には、大勢の人がいました。
テーブルを囲んで、自動販売機で買ったコーヒーを飲みながら、話し込んでいる女性グループがいました。
でも、いちばん多かったのは、センター試験に備えて受験勉強をしている高校生でした。

もしかしたら、「文化のためのホールなのに、受験勉強なんて!」と思われる方もいるかもしれません。でも、私たちは、そうは思いませんでした。なぜなら、ここで勉強をしている若者たちは、ダンスやバンドを練習している人たちを、ごく自然なかたちで、そのすぐ傍らに見ているからです。それが大きいと思います。
「文化活動」をまずは身近に感じられること。
「文化活動」への参加に敷居を感じないようになること。
ふだんの生活の延長線上に「文化活動」を感じられること。
彼ら彼女らは大人になって、きっと今度は「文化活動」に参加しにここを訪れることになるだろう、と思いました。
文化が町に根付くためには、時間がかかるのです。

「北上市文化交流センター・さくらホール」に、こういうことが起きているのには、ソフト、ハード、さまざまな点での工夫があるからですが、平面計画としては、この「アートファクトリー」を施設の中央に配置したことを第一に挙げるべきでしょう。

ふたつのホールがあって、その間に挟まっているのが、この室内化された街「アートファクトリー」です。その場所は常識的には、ふたつのホールのホワイエへつづくエントランスロビーが来るところです。それが、そうでなくて、「アートファクトリー」が置かれている。

公演がなければ、ホールは閉じています。ホールが閉じていれば、そのホワイエも閉じています。ならば、ロビーも閉じたくなります。

そう、従来的なホール建築のプランニングは、公演のときにうまく人をさばけることに特化し、そのかわりに、日常的には茫漠とした空間だけが広がり、行っても楽しくない施設になってしまうのです。

大変、参考になる視察でした。
長時間に渡って、隅々までご案内いただきました千田敬さまに、この場を借りて、お礼申し上げます。
そういえば、千田さんは、このホールの設計段階に行なわれていたワークショップのメンバーだったそうで、計画のときから継続してこのホールに関わられている方がいらっしゃる。それもまた、このホールの大きな強みだと思いました。


2012年1月11日水曜日

グループヒアリングで使用した図面

「かなり大きな宿題」をいただいた昨年末でしたが、
よくよく考えれば、そのときに皆さんにお見せした図面がなければ、その意味など、なかなか理解できないことに気づきました。
それで、今日は、画面小さくてよく見えないかもしれませんが、そのときにつかった図面をそのままアップすることにしました。




2011年12月31日土曜日

かなり大きな宿題

前にも記しましたように、全体のスケジュールから考えると、この12月いっぱいまでに、<三次市民ホール>の設計の基本部分にかかわるような、大切なインプットを終わらせなければ、設計が間に合いません。
これは時間的に大変きつかったです。
設計契約をとりかわせる以前はまだ「設計者」ではないので、設計者として市民からの意見をお聞きする機会を持つことができず、ようやく12月のはじめ、設計契約をとりかわしたその日から、残る時間で情報収集を最大化するために、いろいろなことを試みました。
このブログをはじめたのも、そのひとつの試みです。

12月19日、20日には、青木は伺うことはできませんでしたが、青木事務所の亀田、永山、また20日のみでしたが、空間創造研究所の草加が、三次にて「グループ・ヒヤリング」を行ないました。基本計画をまとめるためのワークショップ(以後、略して「ワークショップ」としましょう)をずっと開催されてきたシアターワークショップの小林さんも立ち会ってくださいました。

なぜ「グループ・ヒヤリング」かと言えば、つまり、「立場によって意見・要望は違う」からです。
<三次市民ホール>が完成して、だれがどのようにそこを使うのか、それは、まだ決まっていません。
もちろん、これまで「ワークショップ」に参加されてきた方々のような、新ホールについて、すでに一家言をお持ちの熱心な方々が、そこに含まれることは言うまでもありませんが、そうでない方々も、オープンしたらきっと使うことになるからです。というより、この施設が「使いたおされる」ためには、設計中に意見を言わなかったけれど、できあがったらドシドシ使うという人が、いっぱい生まれていかなければはじまりません。
だから、意見の強弱にかかわらず、いろいろな方々に意見を聞いてみたい、と考えたのです。

19日の夜は、これまで「ワークショップ」に参加されてきた方々に集まっていただきました。
20日の昼は、公的団体(商工会、官公庁、学校関係)、夕と夜は、現在の市民会館利用者に集まっていただきました。
そしてその場で、現在の「たたき台案」を見ていただき、それについて思うことを自由に発言していただきました。

*****
「ワークショップ」の方々は、すでに自分たちなりに「どのような市民ホールがいいか」を、かなり具体的に考えてみた経験があります。だからでしょう、指摘されたことは、実に具体的でした。
微に入り細に入り、いろいろなレベルでの意見がありましたが、なかでも、設計の基本的骨格を決めていくのに大きく関わる意見は、かなり強引になりますが、次の4点にまとめられるのではないか、と思われます。

1.  駐車場からロビーまでの、スロープなどアプローチへの疑問
2.  大回廊、および 大ホール/ホワイエ/ロビー/リハーサル室の関係への疑問
3.  リハーサル室の、特に音楽ホールとしての利用への配慮のお願い
4.  無駄がなく、シンプルで飽きがこないデザインのお願い

1.  駐車場からロビーまでの、スロープなどアプローチへの疑問
私たちの案は、施設全体を地上5メートルほど持ち上げています。そのため、まず車を駐車所にとめて、そこからなんらかの方法で上に上がらなければなりません。もちろん、そこに「わざわざ感」があっては、<三次市民ホール>に通うのがおっくうになってしまいます。上階へは、自然にアプローチできなくてはなりません。
そこで、私たちは、幅広のスロープを設けて、そこを歩くのが楽しい散歩道になるように考えました。

しかし、まずこのスロープが不評でした。
歩く距離が長過ぎる。雪のときは転んでしまうのではないか。いっそのこと、車で上階に直接行けるようにしたら、などなど。
これら意見の根底にあるのは、車から降りたら、雨にも濡れず、雪にも降られず、さっとスムーズにロビーに入りたい、というお気持ちだと、私たちは理解しました。

2.  大回廊、および 大ホール/ホワイエ/ロビー/リハーサル室の関係への疑問
私たちの案の骨格のひとつが「大回廊」です。それが、施設の外周を一巡りしている、というのが「たたき台案」です。「大回廊」が全体を巡ることで、施設全体の基本形としては、表と裏の区別がなくなります。そこを表とするのも裏とするのも、建築ではなく運用次第、という考えです。

しかし、この大回廊も不評でした。
外周を回っているので、長過ぎる。途中に、ショートカットが必要。
そんなところからはじまって、とうとう、参加された方から、具体的な平面構成案が出てくところまで、意見はエスカレート。
入って正面が回廊+それに取り囲まれる中庭。その右に接して、大ホールホワイエとその奥の大ホール。回廊の左に接して、リハーサル室。こうなると、大ホールの向きが90度回転します。

ホール建築に限らず、美術館でも、図書館でも、ほとんどの建物は、まず入り口に入って、そこがロビーになっていて、そこからそれぞれの機能に分岐していく、というような図式でできています。
その意味で、こうした意見も、なるほど、です。
とはいえ、問題は、この図式が、人がおおぜい入ってくるときに成立するもので、そしてだからこそ、さほどの人が入ってこないつまり平常時には、その空間がとっても「さみしい」雰囲気になってしまう、ということです。
そして、<三次市民ホール>は、日常のときの「にぎやかさ」をどう生み出せるか、が、ひとつの大きな目標なのです。

いや、それにしても、的確なご指摘でした。
たしかに、その素直な視点ももって、案を進化させねばなりません。

3.  リハーサル室の、特に音楽ホールとしての利用への配慮
基本計画で謳われているのは1000席の大ホール。ですが、正直、これが埋まる公演は年に数回のはず。むしろ利用規模として一番多いのは、100人から300人くらいでしょう。そこで、その100人から300人くらいの利用をリハーサル室で。というのが、ワークショップの方々がイメージされていることです。
だから、リハーサル室は、つまりは「小ホール」であって、音楽会としていい雰囲気、よい音響で、ということです。

もちろん、リハーサル室によい音響が求められるのは当然のことです。

リハーサル室はリハーサル室としてそれでよろしいのですが、私たちがもっと気にしているのは、大ホールの方です。ここが日常的に利用できないとなると、じつにもったいない。だから、大ホールを、100人から300人くらいの人が、特に音楽用ホールとして気持ちよく使えるように設計したい、と考えています。
その上で、リハーサル室の位置づけを考えて行きたいと思っています。

4.  無駄がなく、シンプルで飽きがこないデザイン
これは、有限のお金のなかで、なにを優先すべきか、という側面からのご指摘です。第一は機能の充足であり、第二は内装である、という判断です。

私たちもまた、プロポーザルのときの公開審査で、「まずは基本的骨格をシンプルにつくることが大切で、予算が足りないなら、極端かもしれないけれど、オープンしたときが完成ではなく、その後も毎年継続的に少しずつ、内装を追加したり、改良していく、そういう余地があってもいいと考えています。あるときをもって完成し終わるというのではなく、いつもそうしていくという活動そのものを指して、文化というと思うのです。」と申し上げました。

もちろん、この4点以外にも、いっぱいの意見をいただきました。それらが大事でないというのではありません。たとえば、授乳室やおむつ替えのスペースを確保してほしい、など。それらは、もちろん、設計のなかで十分に考慮していくことです。ここであげたのは、繰り返しになりますが、いま建物の基本的骨格を決めていくのにおおいに関わる、という観点で、でした。

*****
続いては、20日の公的団体(商工会、官公庁、学校関係)からのヒアリングです。

特に、商工会の方々からは、ワークショップの方々とは、外観に関して、ある意味で、反対の内容の意見もでました。
つまり、三次をシンボライズするようなシンボリックな形、外部からの人も引きつけるような強い象徴性がほしいという意見です。
壁面に鵜飼のレリーフを施すことで地域の特徴を生かしたり、三次にシンボルである「川」をイメージさせるせせらぎや、人々にぬくもりを与える曲線を、というような具体的な提案もありました。
商工フェスティバルの観点から、中庭は大きく使えるのがいい、という意見もありました。

こちらの方々にとっての「有限のお金のなかで、なにを優先すべきか」は、第一に外観、なのかもしれません。
たしかに、<三次市民ホール>は、町の人々にとって、記憶に残りまた誇りに思える建築でなければならないでしょう。

そういえば、熊本県の過疎の町に設計した「馬見原橋」の設計のときも、かつての宿場町らしさを表現するモニュメントとしてつくってほしい、という意見が多くありました。しかし、「モニュメント」だと、一度はそれを見にくる人はいるだろうけれど、二度は来てくれません。むしろ、町に育った子供が高校を出て、大きな町に出て行って、それでもお盆とかお正月に帰郷して、そのときそれを見て、「ああ、クニに帰ってきたなあ」と思えるような橋をつくったほうがいいのでは、という話をしたことがあります。そういう気持ちを与えるものが、ほんとうの「シンボル」だからです。

また、このグループでのヒアリングでは、学校の音楽の先生もいらっしゃったので、かなりつっこんだ意見交換も行われました。

楽器搬入口のこと、出演者が交錯しない通路幅の確保、お金をしっかりかけた客席、などなど。

ともかく、この回では、商売をされている方々の視点を確認できたことが、大きな収穫だったと思います。

*****
最後は、市民会館利用者からのヒアリングです。

ここでも、楽屋の数が足りない、セキュリティの観点から楽屋専用通路が必要、リハーサル室に鏡が必要、リハーサル室専用の親子室も必要、それ専用のピアノ庫も必要、託児室から中庭に出られるように、大ホールで客席から舞台への移動動線が必要など、さまざまな具体的な意見がでました。

私たちがそのなかで、なるほど、その観点は忘れていたと思ったのは、展示機能についてです。たぶん、生け花などで市民会館を利用されている方なのでしょう。リハーサル室規模以上のギャラリーとして利用を考えられないか、という意見です。
ワークショップの方々は、どちらかと言えば、音楽関係の人が多数でそのなかではあまり議論されてこなかったようにも思えますが、しかし、たしかに、美術や生け花のように、展示の場としての利用もありえることでした。

*****
こうして、私たちは、けっこう大きな宿題をもらって、東京に帰ってきました。
皆さん、どうもありがとうございました。

来年には、皆さんからいただいたご意見の奥底にあるはずの、いまだかたちのないイメージをかたちにしていく作業に入ります。
どうぞ、引き続き、よろしくお願いいたします。

2011年12月27日火曜日

46項目の疑問・要望・提案など

12月3日(土)に、住民説明会が開催されたことは、すでに書いたとおりです。
この説明会で、まずは設計者として案の骨子をお伝えしたわけですが、その内容について、その後、いろいろな疑問や要望や提案をいただいています。そうしたご意見を頭にいれて設計を進めるのはもちろんのことですけれど、そのひとつひとつに個別の返信はできません。ただ、村川真一さんからいただいたものは、おそらく、多くの方々が気にされていることをかなり網羅していると思いますので、そのひとつひとつについて、今現在、考えていることを記してみます。

*建物全体について
01.  日影,特に西側の住宅への影響は検証済みでしょうか?

西側だけでなく北側に隣接する土地への、日影の影響を考慮するのは当然のことです。

02. 敷地自体を持ち上げるとなると,柱も太く・大きくなると思われますが,300台の駐車スペースをとる余裕が本当にあるのでしょうか。また,駐車場の中の移動はスムーズにできるでしょうか?

敷地全体を持ちあげるのではなく、施設全体を持ち上あげる計画です。その下の空間だけで300台の駐車スペースをとれるまで施設の建築面積を大きくするのはかなり非効率に思われますので、その適切なバランスを、今後、設計のなかで、見つけていきたいと思います。

03. 地震対策など建物構造的に大丈夫でしょうか。地震対策は,免震にできる費用的な余裕はないでしょうから耐震で良いと思います。

そう、考えています。

04. 持ち上げた敷地の北側にホールの建物が配置されておりますが,加重のバランスは大丈夫でしょうか。

ねじれ等が起きないよう、構造解析を進めます。

05. 地盤の土壌改良又は,くい打ちなどは必要ないでしょうか。

現在、地盤調査の準備を進めているところです。その結果、どのような基礎が適切かを検討します。今のところ、5m程度の杭打ちを想定しています。(これは、建物を持ち上げたからというのではなく、どのような設計をしたとしても同じことですが。)

06.  敷地5mをあげることに費用がかかりすぎて,大ホール機能がたいしたものにならないことはないでしょうか。

大ホールに求められている機能を落として、その分の費用で施設を5mあげようというわけではありません。必要な機能を満たした上で合理的な建築とすることで、全体のバランスを最適なものにしようとしています。

07. 敷地が上がるのでそこから人(特に小さい子どもなど)が落ちないように安全面に留意してほしいです。

仰せのとおりです。

08.  スロープの安全面もお願いします。

仰せのとおりです。

09.  駐車場から直接上がれるエレベーターや階段・スロープなどをつければ,屋外のスロープに屋根は必要ないと思います。(その費用は内装や設備に使ってほしい。)

アプローチ、つまり駐車場に車をとめ、そこから上に登る方法は、これからかなりよく考えていかなければならない大きな課題だと思っています。説明会では、雪のときにスロープだと滑るのではないか、という指摘をいただきましたし、また、開演前に大勢の人が並ぶようなことも想定しなくてはなりません。さまざまなケースを落としなく考慮の俎上に乗せ、もっとも合理的な計画にもっていきたいと思います。

10. 外観に三次らしさがほしいという意見もありましたが,コンクリートに霧模様を付けるとかで最小限でよいと思います。(その費用は,機能性や設備の向上に使ってほしい。)

機能的には必要もないのに、これが「三次らしさ」だという理由でなんらかの表面的な意匠をつけ加えることは行いたくありません。シンプルな骨格とそこに必要に応じて施される意匠、というのが、私たちが進んで行きたい設計の方向です。もしそれが徹底的に行なわれれば、その結果として「三次らしさ」が生まれるはずだと考えます。また、そうしたことを行なっていくことは、その建築をそれが建つ環境にフィットさせることとなんら反目するものではありません。

*建物内の配置について
11.   事務室はどこに配置するのでしょうか。

プロポーザル時のスケッチには描かれていませんが、エントランスロビーの近くに配置するつもりです。

12. カフェと事務室を離すと,管理運営上カフェにも人を配置しなければならず,運営経費が増すのではないでしょうか。

サービスする人が必要かどうかも含め、これは運営の方式に関わります。なるべく早い時期に、誰がどのように運営していくか、決めていだきたいと思っています。私たちが想像しているのは、カフェと言っても、コーヒーやお茶が飲め、談話や勉強やデートにぴったりの、背筋をのばした快適さをもった、ラウンジに近い空間です。その場合は、テーブルと椅子があればよく、セルフサービス程度でよろしいか、と思っています。

13. これからの話になるとは思いますが,カフェは常時オープンしているのですか。集客が見込めるか疑問があります。常時オープンするのなら,川が見えるような眺めがよい場所がよいのではないでしょうか。(高さ・位置の工夫)

前のご質問を重なりますが、大勢の集客を目標とするものではなく、この施設の魅力のひとつになる場所をつくることを、設計者としては目標としています。川が見えるような眺めのよい場所、というのはよいアイデアだと思います。カフェだけでなく、川が見える空間は、特権的な場所になると思います。

14. カフェがプチ図書館,自習室という設定なら少しは,需要があるかもしれません。

はい、音楽や演劇関係の本や雑誌をとりそろえたライブラリースペースでもあったら、とてもよいと思います。

15. 練習場が大ホールと離れていますが,駐車場からのアクセス(駐車場から直接行けるようにすること)や管理運営上の観点(事務所を通るとか)などのアクセスの工夫が必要ではないかと思います。

練習室だけでなく、この施設のさまざまな部屋へのアクセスのあり方は大変重要な課題だと思っています。今後の設計のなかで、詰めていきたいと思います。

16.  練習場などに和室はないのですか。大楽屋でもいいので,和室が会った方が日本舞踊などの練習ができるのではないでしょうか。

「必要諸室」としていただいた資料では、部屋数に限りがあり、「和室」はありません。しかし、もちろん日本舞踊などの稽古もあるでしょうから、畳を簡単に敷けるような配慮は必要だと思います。

17. 練習場の一つに,バレエ,ダンス,演劇,オペラなどの練習ができるように鏡張りの部屋をつくってほしい。

練習室のひとつには、バレエバー+鏡(カーテン付)を設置したいと思います。

18.  ワークショップ委員からは,100~300席程度の(固定席の)小ホールが必要と提案しましたが,市の最終基本計画では,小ホールとしても使用できるリハーサル室となってしまいました。よって,リハーサル室にも音響がよく,椅子も簡単に設置できる小ホール的なリハーサル室にしてほしいと思います。(青木先生が考えるホール機能(大ホール分割使用方法)が音響のよい小ホールとしての機能があるならリハーサル室の音響はそれほど考えなくて良くなると思いますので,ワークショップ委員(本当に使用するつもりの市民)との意見交換をお願いしたいと思います。

これは重要なご指摘です。もっともニーズが高いのが、100~300席程度の(特に音楽関係の)利用だと理解しています。そこで、大ホールを大ホールとしてだけでなく、100~300席程度の(特に音楽関係の)小ホールとして使用できるようにすることが、この三次市民ホールの設計の肝だと考えています。そのとき、音響は、もちろん、すぐれていなくてはなりません。
そのことを前提として、「リハーサル室」は様々な用途で使える空間になったらなあ、と考えます。

ホール機能について

19.   大ホールの残響時間はどれくらいを想定していますか。

1.7秒から1.8秒ほどを想定しています。ただし、演劇や講演ではその残響時間では長過ぎ、音の明瞭度に問題がありますので、客席の後ろに(手動で)幕を引くなどして、1.2秒くらいまで残響時間を短くできるようにしようと考えています。

20. 1階席が少し平たい印象を受けますが,舞台・客席の高さは適切なものをお願いいたします。

客席からのサイトラインをチェックし、そのことに気をつかいます。

21. 座席は,前後互い違いになるようなものになるのでしょうか。

客席の勾配が計画上大きくとれない場合には、そうなると思います。

22.  座席のクッションは座り心地がよく,長時間見ても疲れないようなものにしてほしい。

仰せのとおりです。

23.  ホールは寒くないようにしてほしい。費用的に無理だと思いますが,できればヒーター付きの座席が希望ですが,できなければそこまで言いません。(以前,三次文化会館に劇団四季を見に来たお客さんが,「こんな寒いところで四季を見るのは初めて」と言っておられた。)

客席の周辺を集中的に空調(居住域空調)しようと考えています。椅子そのものに空調吹き出し口を設置できるのが、もっともよろしいかと思いますが、これは全体のコストバランスによって判断したいところです。もちろん、寒くなく、暑くなく、快適なホールをつくりたいと思っています。

24. 椅子は,ゆったりと見ることができるように最近の趨勢の基準程度でお願いいたします。

現段階では、w520以上、前後900以上で計画することが望ましいと考えています。

25. 1階500席,2階300席,3階200席とありましたが,1階席だけ使いたいときは,2階席,3階席はカーテンもしくは反響板などで塞ぐようにするのですか。(音響を良くしてほしい)

カーテンを設置すると、吸音になる可能性と空調で揺れる可能性があり、それが懸念されます。また、ハードなもので閉じるのは、やはり気積が変わるので、残響時間に影響する恐れがあります。ホールの最近の傾向としては、お客さんを入れないところの照明を消すなどで対応することが多いです。もちろん、そうした使用方法で違和感がないよう、設計する必要があります。

26.  舞台は使用しないで1階席のみ使用のとき,オーケストラピット的な場所は,座席がはずれるようになるのでしょうか。また,その場所は,床張りとなり,せり上がるなど(または移動式舞台を設置?),客席からみて,舞台として違和感がないような感じになるでしょうか。

また,ピアノを移動して,置くことができるでしょうか。

オーケストラピットの場所は、オーケストラピットとしての使用以上に、舞台とも客席ともなることが重要だと認識です。実際、現在の市民会館38年の歴史で、オーケストラピットが使われたことはない、と聞きます。ですから、今後、それを「オーケストラピット」にまで整備するかどうかは、全体のバランスを見て決定していくことか、と考えます。
舞台として使用するときには、ピアノをそこに移動して置くことができます。

27.  舞台は使用しないで1階席のみ使用の場合,本舞台との仕切りは,緞帳のみですか?反響板などはつきませんか?

音響を考えれば、緞帳的なものでは解決できません。これも重要な設計のポイントですので、永田音響ともよく相談しながら、かつ工事を睨んだ仕様検討を行なって行きたいとおもいます。

28. 舞台に観客席を置くのは,下手側を開放するときのみですか?舞台のみで音響のよい小ホールのようになりませんか?

舞台への観客席の置き方は自由です。音響に関しては検討の余地はあるかと思いますが、一般的には舞台内は吸音で設計されることが多く(後ろ壁などからの遅れた反射音が客席に響かないにするため)ので、生音楽にとっての「音響のよい」空間というのは難しいかもしれません。ただし、ホールを鑑賞利用しないときには、独立した大きな練習場として使用すること検討していく必要がある、と考えています。

29.   舞台の上手から大道具などを搬入するとなれば,下手には,バトン昇降機などの舞台装置が配置されると思われ,開放して,中庭が見えるようにするのは困難であると思いますが,本当に可能なのですか。

全ての吊物設備をすのこ上での「電動ドラム巻取式」で計画することで、下手壁面に「綱元」を設けないようにすることはできます。ただ、これも全体のコスト・バランスのなかで決めて行く必要があります。

30.  舞台の観客席は,移動式の可動椅子でしょうか?であるならば,リハーサル室に持っていけるようにして,リハーサル室でも使用できれば良いと思います。

リハーサル室の椅子を使うこともできます。また、段が必要であれば、単管足場なのでくみ上げることもできます。

31. 現在の三次文化会館の舞台は檜造りでかなり良い素材が使われていると聞いています。それを何かに再利用できませんか?できなければ,現在の文化会館跡地にできる道の駅的施設に使ってほしい(こちらは,市への要望)。

なるほど、そのリユースができるといいですね。

*その他設備について

32. 照明,音響(マイク)設備については,コンピュータ管理できる最新のものとして,あまり人手がかからないものとしていただきたいです。

現在では、舞台機構、舞台照明、舞台音響とも、コンピュータ管理できるデジタル制御が基本です。この施設でも、それらが採用されることになるか、と思います。ただ、高性能であればあるほど、その性能を活かしていくためには人材が必要ですし、また安全な運用を実現していくためにの監視要員も必要になります。つまり、デジタル化は、残念ながら、人材の省力化にはつながるわけではありません。

33. 楽屋は,普段は会議室でも使用できるものにしたら良いと思います。

仰せのとおりです。

34.  ピアノをおく部屋(空調付き)の部屋が必要だと思います。出し入れしやすく動線が短い場所が良いと思います。

温湿度管理ができる「ピアノ庫」あるいは「楽器庫」を計画することが望ましいと考えています。

35.三次文化会館には,グラントピアノが2台(スタンウェイとヤマハ)ありますが,スタンウェイが入ってからヤマハはほとんど使っていないと思われるので,リハーサル室に置くとかして使えるようにしてほしい。

情報をどうもありがとうございます。

35. トイレには,温水洗浄便座を設置する予定ですか。(儲かる施設でないので,困難かもしれませんが,他のホール等と比較して,現在の趨勢で設置しているようなら設置してほしい。)

温水洗浄便座の是非の前に、まずは「洋便器」と「和便器」の比率の検討が必要です。一般的には、「洋便器」の設置が急速に増えています。しかし、三次ではどうか、をよく検討したいと思います。ちなみに、便座ウォーマの設置も増えていますが、洗浄便座の設置のケースはそれよりも少ないようです。

36.  避難路などのため,建物敷地から下の敷地への出口(階段・スロープ)を数箇所かつける必要があると思います。

仰せのとおりです。

*管理運営等について

37. 日常の維持管理が困難な設備配置は,やめてほしいです。(たとえば,すごく長いはしごを使って登らないと電球を変えられないような照明など)

仰せのとおりです。

38. 大回廊を設置するとなると,文化祭や祭など屋台やバザーなどが並ぶ催し物ができますね。

大回廊が、三次のもうひとつの「街路」になるよう、がんばりたいと思います。

39. 交通渋滞はある程度は仕方がないと思います。道路へ入りやすく出やすい侵入口にするしかないのではないでしょうか。(地下駐車場への進入出道路を2箇所以上にする必要はあると思います。)

駐車場の管理システムについては、検討が必要です。いずれにしても、なんらかの管理が必要でしょう。その場合、入口ゲートは1箇所の方が管理しやすく、出口ゲートは複数箇所あったほうが渋滞などのトラブルと軽減すると思われます。

*追加の質問

40. できれば,2階・3階席へ行くのに,車椅子や足の不自由な方でも行けるようにスロープになっていればよいと思いますが,難しければ,エレベーターと階段でもよいです。

スロープで登るのは、相当の距離(4m登るのに50m以上)移動しなければならないので、必ずしもスロープの設置が最良とは言えません。計画全体で最適な方法を見つけていきたいと思います。

41.  バリアフリー席(車椅子で見れる席)が必要であると思います。

車椅子席の設置台数が条例で定められているところや、福祉協議会からの要望で設置台数が決められているところがあります。そのため、現在、市に確認中です。また、ホールの場合、中通路の後ろあたりに車椅子を設置できるスペースを確保するのが一般的になりつつあります。

42.  確か,基本計画には親子席(部屋)を設置することとなっていたと思いますが,最近は,子ども預かりを実施し,利用が少ないということなので,私としては,なくても良いと思います。(親にとっては,落ち着いて見ることができないし,子どもにとっては,狭い部屋となり,窮屈で退屈になるため。)

仰せのとおり、隔離された部屋で音楽や演劇を楽しむというのは、本来の趣旨から言えばおかしなことですので、お書きになっていらっしゃるように判断されているところもあります。しかし、親子席を席として売るのではなく、親子で通常の客席で鑑賞している時の緊急避難場所(子供がぐずりはじめたり、泣き出してしまった場合)として設置するところも少なくありません。また、障害者で声が出るのを制御できない方が鑑賞される場合や、上演写真を撮影するのにシャッター音が気にならないよう隔離された部屋で行なう場合、同時通訳ブースとしての利用、アナウンス用ブースとしての利用が考えられますので、「親子室」ではなく、「多目的室」として計画することも少なくありません。

43. 当然のことですが,2階・3階席からも舞台が良く見えるようにしてほしい。(ホールの形状が四角であったので,横の席から見にくくなるのではないかと思ったので,念のため。)

サイトラインのチェックは見下げも大事ですが、バルコニー客席下からの見上げのサイトラインも十分にチェックする必要があります。

44.   映画などが上映できるようにしてほしい。(最近は,プロジェクターなのどの上映機器は,業者が持って来ることができるので,それらを設置できる場所,電源などを備えればよいと思います。余裕があれば,上映機器も導入していただきたいですが・・・。)

35ミリや16ミリの上演機能を持たすと映写機が必要なだけでなく、専門的なオペレータが必要になります。実際には、仰せのとおり、最近は、プレゼンテーションも可能なプロジェクターの導入の方が主流かと思います。ただし、「名画上映」のようなことを行なうには、映写機の設置が必要になります。このことについても、総合的な見地から決定するべきと思います。

45.   三次市には,三次ケーブルビジョンという地元ケーブルテレビ局があり,よく発表会などを撮影してテレビで流していますが,それらテレビカメラを設置できる場所を確保し,集音等ができる装置及び電源を備えてほしいと思います。

ガラス越しでは映像収録はできませんので、カメラは客席でまわします。専用ケーブルの敷設の有無は、その使用頻度によるかと思われます。とくに、デジタル技術の進化は激しく、今、使っている信号線がつかいものにならなくなることも多く、一般的には、仮設対応(必要時にケーブルを引き回せるルートやピットを設ける)を原則としているようです。このことについても、総合的な見地から決定するべきと思います。

46. 上記2つのことは,後からでは,うまく付けられないということなので,当初から設置してほしいと思います。

できたら、基本設計完了時までに、設置の有無を協議し、結論を出したいところです。

2011年12月23日金曜日

日本に広場がない訳

(承前)
さて、具体的に設計をはじめるとき、その準備として、法規チェックをします。

この建物の設計をこういう方向で進めていって、法規的に大丈夫か?
あるいは進めるにあたって、検討し、明らかにし、解決していかなければならない法規的課題はなにか?
そんなことを、設計の最初期に調べ、関係機関を協議し、そしてクリアするわけです。

<三次市民ホール>の設計も、そんな手続きを踏んでいて、広島県三次庁舎にある「北部建設事務所」との打合せが、すでに何回か行なわれました。

ホールですから、避難の安全確保は、その最重要課題です。
しかし、ハタと立ち止まったのは、建物全体を地上から5メートル上げたときの、その下にできる空間の扱いについてでした。

先に、私たちが提案したことの骨子のひとつ「地上から、5m持ち上げる」について、以下のように書きました。

「地上から5m、持ち上げる」。すると、その下に空間ができます。雨に濡れない屋根のかかった広場的な空間です。そこを施設の「余白」として、様々に、自由に、活用することができます。もちろん、大きな公演があるときは、駐車場として使われます。

まずは、この屋根のかかった広場的な空間が、建物の床面積にカウントされるのかどうか、です。
床面積というのは、屋内になっている部分の床の面積のことです。
この広場は、高架下のようなもので、もちろん屋外の空間です。
だから、床面積にカウントされないか、というと、そんなことはなく、正解はカウントされる、です。

敷地に対して、敷地面積の何倍までの床面積をもった建物を建てていいのかが法律で決められています。
それが容積率と呼ばれるもので、容積率200%だと、敷地面積の2倍まで建てていい、という意味です。
容積率を規制するのは、その場所の環境の良好を守るためです。
この規制は、その場所ごとに、そこにふさわしい建物の大きさがある、という思想から生まれたものです。
しかし、都会の地価の高いところでは、もったいないから、容積率、目一杯につくりたくなります。
だから、どういうときに床面積としてカウントし、またどういうときにカウントしないか、が細かく取り決められています。
そのなかで、屋外空間であっても、屋内的用途の場合は、床面積にカウントされることになりました。
かなり厳しい規制ですが、建てたいという意志が強いだけ、それを規制しようという意志も強くなるのは世の常です。
では屋内的用途とはなにかと言うと、これは「居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列、保管、格納等の用途」のことと定義されています。駐車場は、自動車の「格納」の場所ですから屋内的用途。
こういうわけで、駐車場としても使われる、<三次市民ホール>のこの「雨に濡れない屋根のかかった広場的な空間」は、床面積にカウントされるのです。

そして、床面積にカウントされるとなると、今度は、消防法上、防火性能の仕様を決めるために、その空間の用途を特定しなければなりません。ところが、困ったことに、法文のなかに「広場」という用途がないのです。いちばん近いのは「集会場」か「駐車場」。「広場」というのではだめで、そのどちらかの用途にしなければなりません。

あらかじめ決まって用途がある空間を「遊園地」、人がそこで活動することでその用途がつくられていく空間を「はらっぱ」。空間をこのふたつに分けて、「はらっぱ」をつくっていこう、というのが、私がずっと試みてきたことでした。
でもそもそも、「はらっぱ」あるいは「広場」は、法律上、認められていなかったのでした。
これはもちろん、建築についての法律をつくったときに、人がそこで活動することでその用途がつくられていく空間、なんてものは想定されていなかったことを物語ります。すべての空間はその利用目的なあらかじめ決まっている。それが暗黙の了解なのでした。
そういう前提で法律がつくられると、翻って、空間はあらかじめ利用目的を持ってなくてはならなくなります。
これでは本末転倒、だと私は感じます。

とはいえ、現行のルールはルールとして守らなければなりません。

それで、市と話しあって、この空間を「駐車場」として定義することになりました。
この空間で起きうるもっとも危険な状況は、ガソリンへの引火でしょう。
しかも、駐車の用に使われるのが基本なのですから、「駐車場」でよいのではないか、と。

ただし、この時点で、基本的にはこの空間で「集会」を行うことはできなくなりました。
実に残念なことです。










2011年12月20日火曜日

ルールのアップデート

完璧なルールというものはありません。

とくに生身のものを扱うルールだと、もうほとんど完璧から無限大の距離にあります。というのも、生身というものは、なにをしでかすかわからない存在なのですから。
どんなルールにも、その前提の部分に、ある想定された「しでかすこと」があります。だから、その想定された「しでかすこと」の範囲内であればルールはうまく適用できる、かもしれません。しかし、想定されていなかったことに対しては、ルールは実に的外れな「規制」になってしまうか、あるいは、「見落とし」を引き起こしてしまいます。

こういう不都合に対してぼくたちがとりえる姿勢には、大きく言って2つあります。1つは、本音と建前に分けて対処する、という姿勢。もうひとつは、ルールをいつもアップデートし続け、と同時に現行のルールには従う、という姿勢です。

言うまでもなく、日本の社会は、その前者の「本音と建前」の姿勢でやってきました。一度、決まったルールはテコでも動きません。だから、時代が下るにつれ、ルールが想定していなかった事態が増えてきて、どんどんと現実とあわなくなってきます。でも、ルールは、表向き守っていればよいものなので(建前)、「運用」でなんとかなる、あるいは、ルール違反していてもまあいいじゃない(本音)、としてきたようなのです。ならば、わざわざルールをアップデートしなくてもよいわけで、循環的にますますこの構図が強化されていきました。それがよかったのか悪かったのかは置いておくとして、ともかく、そうした姿勢をとることが、社会全体のコストにとって合理的だったのだ、と思わざるをえません。

ところが、ここにきて、日本の社会はかなり変わってきました。本音が許されなくなってきたのです。本音がなければ建前だけの社会になります。ルールは絶対に守らなくてはなりません。もし守らなければ「極悪」の烙印がおされます。その一方で、一度築いたルールは絶対普遍、ということだけは残ったまま。このことがたいそう、気にかかります。

ルールを守る社会でやっていくためには、もう一度言うなら、そのルールを現実にあわせて、常にアップデートしていかなければならなりません。ルール遵守とルールのアップデートは、いわば車の両輪なのです。

こういうことは、<「法令遵守」が日本を滅ぼす>(郷原信郎、新潮新書)で教わったことです。

これはもちろん、建築についても言えることです。

建築基準法を基礎とする建築についての日本の法律体系もまた、建築物についてのある想定されたイメージに基づいてつくられています。
しかし、設計というのは、その想定内で建物を構想することではなく、その想定を越えても、より「いい」建物を構想することなのです。だから、結果として、その構想が、建築法体系が想定していたことを越えてしまう、というのは日常茶飯事です。つまり日常的に不都合が起きるわけです。
こういう不都合に、かつては「本音と建前」で対処してきました。それが、最近になって「本音」が許されなくなって、「建前」が強化されてきました。にもかかわらず、「ルールをアップデートしていこう」という流れに、なかなかなりません。ほかの分野と同じことですね。

そんなわけで、「このルールのこういうところがいまの現実にあっていない」ということを、まずは、皆がどんどん言っていったらどうだろう、と思っています。ルールにどんな不都合があるか、まずは、それが表に出てこなければ、ルールのアップデートもなにもないわけですから。

(次回につづく)

2011年12月17日土曜日

プロジェクト・チーム

12月までの目標として、設計を進めるにあたっての基本的な要件を聞き取ることを挙げています。でももちろん、それだけを行っているわけではありません。

これは、実際に「設計」をされていない方にはなかなか想像しにくいことのようですけれど、「設計」というのは、終わることない「スタディ」の連続なのです。
朝、アトリエに着きます。昨日までにつくってきた図面や模型を見ます。そして、ここがうまく行っていないなあ、というところを見つけて、それをどうやったら改善できるか、考えます。考えがある程度まとまれば、それを図面の上で、模型の上で試します。そしてまた、その図面や模型を見ます。その間に、思うことお聞きしたこと、思ったこと、考えたこと、調べてわかったこともインプットしていきます。そういう図面や模型を前に、プロジェクトチームが集まって議論します。

そうそう、<三次市民ホール>の設計プロジェクト・メンバーをまだ紹介していませんでした。
建築の設計は、さまざまな分野の専門家がチームになって進みます。

構造の設計は、金箱構造設計事務所が担当します。
設備(空調、電気、給排水)の設計は、森村設計が担当します。
音響については、永田音響が担当します。
ホール建築としての専門的な側面では、空間創造研究所が担当します。
それらを束ね、全体の計画を進めるのが青木淳建築計画事務所です。

さらに、<三次市民ホール>の基本計画づくりを担当されてきたシアターワークショップが、市と私たちの間に入って調整を行ってくださっています。シアターワークショップも、空間創造研究所と同じく、ホール建築専門のコンサルタントです。2つのホール建築専門のコンサルタントが、立場をかえて加わるという、実に贅沢なプロジェクトなのです。

2011年12月16日金曜日

第1回住民説明会

12月3日、第1回目の住民説明会「プロポーザル案で提案したこと」が開かれました。
市民の皆さんに、まずは私たちがプロポーザル案で提案した内容を知っていただくためです。
直前の広報だったのにもかかわらず、40人ほどの方が足を運んでくださいました。

前半は、青木のプレゼンテーションで、このブログでも最初に挙げた「1. 地上から5m、持ち上げる」、「2. 大回廊を設ける」、「3. 空間を使いたおす」についてお話ししました。あわせて、青木事務所サイドでホール設計のコンサルにあたることになっている、空間創造研究所の草加叔也さんを紹介しました。
そして、後半は、市サイドでホール設計のコンサルにあたっているシアターワークショップの伊東正示の司会で、参加された市民の方々との意見交換会が行なわれました。

その意見交換会、こういう会としては、かなり活発なものだったと思います。
いろいろな方が発言されました。

・「予算の制約は大きいけれど、後世に残していくものなのだから、立派なホールをつくってほしい」「市も設計者を支援してほしい」と、設計を応援してくださった方、

・「三次にふさわしい外観を」「州都にふさわしいホールとしては1000人ではなく1500人は入れる方がいい」『スロープからの動線では足りないのではないか? 」「搬入動線はうまくいっているか? 」「ホールには花道や奈落がほしい」「回廊をまわす位置は重要、回廊の内側には中庭が設けられ、外側には周辺の山や川が展望できる空間になりえる、カフェをどちら側に設けるのがいいか、など、よく考えてほしい」と、かなり専門的な(かつ鋭い)意見のおっしゃられた方、

・「雪のときなどを考えるとスロープに屋根は要るのでは?」「 屋上(フライ)に登れるようにすると展望が楽しめる」「三次の地元材をつかってほしい」「市は運営をしっかりやってほしい」と、アイデアフルな方、

・「高齢者と視覚障害者に優しい施設に」、「外観のみてくれではなく、実質的に内部の充実を」と、設計者として肝に銘じなくてはならないことを、確認してくださった方、

・「建設には反対の立場であるが、つくるなら維持管理しやすいものを」と、運営を維持していくのにお金のかかるこうした施設に、ほんとうに大事なことを確認してくださった方、

・「地震対策をしっかりと」「三次の冬は暗いので、それを少しでも明るい雰囲気に持って行けるように」「音楽や映像も使ってほしい」と、全体の空間の質を詰めて行くにあたって、考慮すべき視点を与えてくださった方、

・「駐車場への自然光をどううまく導入できるのだろうか?」と、まさにこのプロジェクトにおける挑戦のひとつを指摘してくださった方、

有意義な会だったと思います。
こういう、市民の誰でも出席して意見の言える会を、基本設計素案ができた頃(というと、2月中旬でしょうか)に、また開催できたらな、と思いました。





2011年12月15日木曜日

基本設計のスケジュール

建物の設計は、大きく言って、2つの段階に分かれます。基本設計と実施設計です。
基本設計というのは、設計のための条件を把握・整理し、その条件に見合った案をつくることです。建物の骨格にあたるところがここでフィックスされます。
実施設計というのは、基本設計に基づいて細部の詰めを進めることと、その建物を実際に建てるために施工者にその内容を指定するの専門的図書(図面や書類)を作成することです。

ところで、
<三次市民ホール>は、来年9月いっぱいで実施設計完了、ということになっています。逆算すると、遅くとも来年3月末には基本設計をまとめなければなりません。ほんとなら、せめて半年くらいは、市民の皆さんと、ああでもない、こうでもない、と案をいろいろ揉んで、それから後に、基本設計をはじめたいところです。が、その余裕がまったくないのです。

2011年12月:基本設計のための条件整理
2012年01月:基本設計素案づくり
2012年02月:基本設計案の収束
2012年03月:基本設計案の調整と実施設計に向けての整理

現実的に考えると、これが、基本設計をまとめるまでのスケジュールなのです。
こう書いてみて、改めてそのタイトさを実感します。

2011年12月13日火曜日

3. 空間を使いたおす

公演のときは華やかだけど、ふだんはひっそり。実は、ホールは往々にしてそうなってしまいがちな種類の建物です。でも、それでは、せっかく建てたのに実にもったいない。市民が使ってなんぼ、どう使いたおせるようにするか、が大きな課題です。

だから、楽屋は楽屋としてだけ使われるのではなく、積極的に、青年団の寄り合いに、茶話会に、三次人形伝承教室に、コーラスレッスンに、生楽器の練習に、といろいろな用途で使われるように考えていきたい、と思います。

大ホールが中ホールとしても使え、リハーサル室が宴会にも使え、スタジオがバザーに使え、舞台が展示室に使え、駐車場がダンスの練習が大道具の製作にも使えるように考えていきたい、と思います。

となれば、市民ホールは、いわゆる「文化」や「芸術」のためだけでなく、日常的にひろくいろいろに使われる「町の大きな寄合所」に近いのかもしれません。

とは言え、市民ホールと公民館(コミュニティ・センター)はまったく同じ、というわけではありません。

市民ホールには、心地よさが必要ですけれど、それは背筋を伸びる心地よさがあってほしい。その場所にいるとちょっと格好よくなれる。そんな空間の質を目指そうと思います。

2011年12月9日金曜日

2. 大回廊を設ける

空間のなかで、誰もが立ち寄れる場所を「表」、そうでない場所を「裏」と呼ぶことにするなら、ホール建築は、一般的に言って、表と裏に二分されるのが常です。たとえば、ホワイエは「表」ですが、関係者以外は立ち入り禁止になる楽屋などは「裏」です。

でも、この三次市民ホールで、表と裏を固定してしまうのは、大変にもったいないことです。というのも、日常的にこの建物を使うのは市民だからです。外から呼んで開催される大きな公演は「いつも」ではないのです。

だから、ふだんは、どこもが表になるようにつくってあって、時と場合によっては、表と裏に使い分けることができるようにする、というのがいい方法だと考えました。

そしてそのために、「大回廊」を導入することを提案しました。建物を一周まわる大回廊。町に例えれば、それは街路です。その街路は、ふだんは誰もが通うことができます。しかし、必要があれば、その一部を塞き止めて、裏として使うこともできる。

大回廊を巡らせておけば、運用によって、表と裏とを切り替えることができるのです。

2011年11月21日月曜日

1. 地上から5m、持ち上げる



2011.3.11。それは、想定外の災害がいつでも起きうるということを、ぼくたちの思考の基盤に組み込んでおかねばならないことを、ぼくたちに改めて突きつけるものでした。
三次もまた、昭和47年に大水害に見舞われています。もちろん、それを教訓に、その後、灰塚ダムが完成するなど、治水レベルはあがってきています。
しかし、もしものことを考えたら。。。。。

そこで、ぼくたちはまず、この施設を地上から5m、持ち上げたらどうだろう、と考えました。
5mというのは、公表されている「水害ハザードマップ」から導きだされてきた高さです。
そうすることで、ここを使う人々だけでなく、まわりにお住まいの人にも、もしもの場合にはそこに逃げれば、という安心を与えることができます。

この「地上から5m、持ち上げる」というアイデアは、こうしてまずは、防災の観点から生まれました。

「地上から5m、持ち上げる」。すると、その下に空間ができます。雨に濡れない屋根のかかった広場的な空間です。そこを施設の「余白」として、様々に、自由に、活用することができます。もちろん、大きな公演があるときは、駐車場として使われます。

プロポーザル案


「(仮称)三次市民ホール建設設計業務公募型プロポーザル」への提出資料です。
提出が許されていたのがA2のパネル1枚でした。そこにいろいろなことを詰め込まざるをえなかったので、かなり見にくい画面になってしまっています。

でも、提案は簡単で、骨子は3つ。
1) 地上から5m、持ち上げる。
2) 大回廊を設ける。
3) 空間を使いたおす。
それらをひとつひとつ、これから順を追って、案の内容を説明していこうと思っています。