2012年2月3日金曜日

北上市文化交流センター・さくらホール

更新がだいぶ滞ってしまいましたが、もちろん、その間何もしていないわけではなく、昨年の末までにいろいろといただいたご意見を踏まえ、検討を重ねる毎日が続いています。

16日には、前回のたたき台案からの修正方向を確認のため、市役所で打合せがありました。そして、そのときの討議も加えて、さまざまな観点からの検討・調整を進めています。18日には永田音響と打合せ、19日にはシアターワークショップまた空間創造研究所と打合せ、20日には、そこまでの検討での案に基づく概算がはじまりました。127日には、その概算結果を踏まえて市役所で打合せがありました。
そして現在は、以上の作業を踏まえて、「基本設計素案」をまとめているところです。
それがどんな案になるのか、気になることと思いますが、それを皆さんに説明させていただくのは、おそらく2月の末頃になるかと思います。
どうぞ、もうしばらくお待ちください。

ところで、「三次市民ホール」の目指す重要な方向のひとつとして、「空間をつかいたおす」がありました。そして、その点で私たちがかねてより気にしていたホールがありました。
それが、岩手県北上市にある「北上市文化交流センター・さくらホール」です。
実は、その設計に劇場コンサルタントとして関わっていたのがシアターワークショップ、また音響コンサルタントとして関わっていたのが永田音響なのです。しかも、それぞれ担当者まで、「三次市民ホール」の担当と同じ、という偶然。

その「北上市文化交流センター・さくらホール」を、110日、シアターワークショップの伊東さん、小林さん、奥田さんにご案内いただきました。

なぜ、このホールが気になっていたか、と言えば、このホールでは、練習室、スタジオなどが施設の中核を占めていて、それらがまるでひとつの街のような雰囲気を漂わせているからです。しかも、聞くところに寄れば、その街の部分(「アートファクトリー」という名前がついている)に、いつも大勢の人がいる、とのこと。
公演のない日には人影のなく寂しいホール建築が多いなか、どのように「空間をつかいたおす」ことに成功しているのか、やはり、自分の目で見ておきたかったのです。

雪がちらつく寒い日でした。
しかし、たしかに、ミュージックルーム、レッスンルーム、アンサンブルルーム、スタジオ、アトリエなどからなる「アートファクトリー」には、大勢の人がいました。
テーブルを囲んで、自動販売機で買ったコーヒーを飲みながら、話し込んでいる女性グループがいました。
でも、いちばん多かったのは、センター試験に備えて受験勉強をしている高校生でした。

もしかしたら、「文化のためのホールなのに、受験勉強なんて!」と思われる方もいるかもしれません。でも、私たちは、そうは思いませんでした。なぜなら、ここで勉強をしている若者たちは、ダンスやバンドを練習している人たちを、ごく自然なかたちで、そのすぐ傍らに見ているからです。それが大きいと思います。
「文化活動」をまずは身近に感じられること。
「文化活動」への参加に敷居を感じないようになること。
ふだんの生活の延長線上に「文化活動」を感じられること。
彼ら彼女らは大人になって、きっと今度は「文化活動」に参加しにここを訪れることになるだろう、と思いました。
文化が町に根付くためには、時間がかかるのです。

「北上市文化交流センター・さくらホール」に、こういうことが起きているのには、ソフト、ハード、さまざまな点での工夫があるからですが、平面計画としては、この「アートファクトリー」を施設の中央に配置したことを第一に挙げるべきでしょう。

ふたつのホールがあって、その間に挟まっているのが、この室内化された街「アートファクトリー」です。その場所は常識的には、ふたつのホールのホワイエへつづくエントランスロビーが来るところです。それが、そうでなくて、「アートファクトリー」が置かれている。

公演がなければ、ホールは閉じています。ホールが閉じていれば、そのホワイエも閉じています。ならば、ロビーも閉じたくなります。

そう、従来的なホール建築のプランニングは、公演のときにうまく人をさばけることに特化し、そのかわりに、日常的には茫漠とした空間だけが広がり、行っても楽しくない施設になってしまうのです。

大変、参考になる視察でした。
長時間に渡って、隅々までご案内いただきました千田敬さまに、この場を借りて、お礼申し上げます。
そういえば、千田さんは、このホールの設計段階に行なわれていたワークショップのメンバーだったそうで、計画のときから継続してこのホールに関わられている方がいらっしゃる。それもまた、このホールの大きな強みだと思いました。