2012年3月6日火曜日

基本設計素案



 
前のブログに、皆さんに「基本設計素案」を見ていただけるのは、おそらく2月の末頃、と書きましたが、だいぶ遅れてしまいました。
今日は、現段階での「基本設計案」をアップします。
ご覧になって気づかれたことやコメントなどありましたら、いつものように、miyoshihall@aokijun.comまでどうぞよろしくお願いします。

基本設計というのは、夢物語や「絵空事」の案ではなく、それをもとに細部を詰めていけば、求められている機能、予算、工期などが実現する、はずの、いわば設計の「原型」のことです。
ここがうまくいっていなければ、その先はうまくいきっこないので、設計のなかで、とても大切な区切りです。

私たちは、去年の終わりほぼ1ヶ月で、ともかく、コンペ案についての意見を皆さんからお聞きしようと努めました。そしてその結果、「かなり大きな宿題」をいただきました。その内容は、12月31日づけのブログ「かなり大きな宿題」にあるとおり。

その後1月、2月とそれを受けて、たたき台案を見直す一方、無理なく予算内で収まるよう、案を調整してきました。
どんな場合でもそうですけれど、多くの方々のご要望を入れていけばいくほど、計画は膨らんでいくもの。
そして、そのままでは、予算を超過するか、質が下がるかです。
だから、あるところでは膨らませながらも、あるところでは身を切る思いで削っていく、という作業が必要になってきます。メリハリをバランスよくつけていく作業、と言ってもいいかもしれません。

どんな調整をしたかと言えば、
1) 雨や雪に濡れずに、道路からまた駐車場からのアクセスできるようにしたこと、
2) 様々な使い分けが可能なよう、回廊を分岐型に変えたこと、
3) リハーサル室を正方形平面から、より使いやすい長方形平面に変えたこと、
4) あまり使い道がないとされた中庭を切り詰めたこと、
5) 全体に渡って、形をシンプルにしたこと、
の5つが柱でした。

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三次市民ホールの特徴は、なんと言っても、「空間を使いたおす」ことです。
そのためには、全館が、ひとつのイベントで使われているときからはじまって、特段のイベントがない市民の普段使いのときまで、さまざまなシーンを想定して設計しなければなりません。

「空間を使いたおす」とは、別の言い方をすれば、
 全館利用でもスムーズにさばけ、普段使いでもにぎわいがあるようにする、
 ということです。

そして、残念ながら、そういうことを追求してできているホールはあまりありません。
だから、この両立を本気で求めれば、その空間構成は、多くの人がなんとなく思っている「ホールというのはこんなもの」から離れていきます。
しかし、なにも先入観に縛られる必要もない、むしろそうした結果、「三次にしかないホール」になれば、というのが、私たち設計者の思いです。

「三次市民ホール」が、その意味で、いちばん普通と違っているのは、ホワイエ、ロビーのありかたです。
普通のホールでは、エントランスホール→共有ロビー→ホワイエ→ホール、という順番に空間が並んでいます。
たしかに、これならスムーズに人をさばけます。
しかし、これは大きな公演のときを(だけを?)想定した構成なのです。
なんなら、大きな公演のないときを想像してみましょうか。
ホールはもちろん、ホワイエも閉めることになるでしょうし、共有ロビーだって、開けても、実にさみしい景色が広がるばかりではありませんか。

それに対して、私たちがつくってきた案では、共有ロビーがなく、そのかわり「回廊」があります。そして、それに接するひとつの大広間として「ホワイエ」がつくられます。
大きな公演のときは、エントランス→ホワイエ→ホールとつながります。
しかし、日常的には、エントランス→回廊→ホワイエというルートだけでなく、エントランス→回廊→ホール、というルートができています。
これなら、ホワイエはひとつの部屋として使えます。
ホールもある程度、人数を絞った使い方ができます。

「市民ホール」全体が、回廊を「道」とするひとつの「町」となっているのです。

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それから、「大ホール」はいろいろな規模の使いかたに対応する、ということにも強い思いを持って、ここまできました。
「大ホール」は、2階席、3階席、4階席の3層の構成。
(1階は駐車場なので、ホールは2階からはじまります。)
全体を使えば1000人のホールです。
2階席だけ使えば、600人弱のホールです。
うち、中通路の前だけを使えば、150人ほどのホールです。

使用の機会で言えば、その間の150人から500人、というのが、もっとも多いはずです。
大ホールを、そういう規模でつかって、音もいいし、雰囲気もいい。
これが、この「大ホール」の設計のなかで、実はとても大切なことです。

「大ホール」が、150人程度の小音楽ホールとして使えることは、「三次市民ホール」にとって、とても大きな意味を持ちます。
なぜなら、150人規模ということでいえば、「三次市民ホール」にはもうひとつ「リハーサル室」があるからです。
「三次市民ホール」は、150人規模の固定舞台と固定客席のある、特に生演奏のコンサートに適した(「大ホール」でもある)小ホールと、同じく150人規模の可動舞台と可動客席のさまざまな用途に使える、(「リハーサル室」という)フレキシブルな小ホールと、異なる性格をもった二つの音響的に優れた小ホールを持つことになるわけです。

「リハーサル室」では、舞台と客席のレイアウトを変えることで、室内楽から規模の小さな管弦楽、またピアノや声楽、民族音楽や伝統芸能、ファッションショー、展示会、物産展、企業展示、格闘技、クラブ・イベント、演劇、ダンス、講演会、式典、パーティ、飲食を伴うライブなど、さまざまな催しの開催が可能です。

大ホールの小ホール使い。
リハーサル室の多目的利用。
こういうことが、「空間を使いたおす」ということの具体的な内容です。