2012年3月21日水曜日

日照時間のこと

三次市民ホールの建設予定地の西側に隣接している住宅地にお住まいの池田雅之さんからメールをいただいています。

市民ホールの建設によって、「朝日がきれいに入る団地」が、「縦にも横にも塞がれ」ることで、日当りが悪くなり、「霧も多く日照時間も少ない」この三次でさらに日照時間が減るのではないだろうか、雪も日陰では溶けにくくなってしまうはずだけれど、そういうことを考慮した案になっているのだろうか、という内容です。

まさにこの懸念は、ぼくたちがこの案を考えるにあたって、最初から配慮してきたことでした。
なにしろ、今度の市民ホールは背の高いフライ(舞台の天井裏のこと)を持つ本格的なホールとして構想されているからです。

演劇などの公演では、舞台美術のセットが途中入れ替わりながら進みます。第一幕は月光に照らされる城、第二幕はカーニバル、第三幕はある夏の午後の麦畑、というような具合ですね。ホールでこういうことを一般的にどうやって実現しているかと言うと、場面展開ごとのセットが舞台の天井裏に吊るされていて、それを下げたり上げたりすることによってです。もちろん、次に出現するセットが丸見えでは困りますから、客席から見て、そうしたセットがちゃんと隠れて見えないようにするために、まず舞台空間の高さと同じだけの天井裏が必要になります。さらに、そうした舞台美術のセット、幕物などの吊り物を上げ下げする機構のための空間に、舞台空間の高さの1/2程度が必要です。つまり、舞台空間の高さの、しめて2.5倍の高さの空間が必要になってくるのです。

こうしたことから、どのホールでも、こうしたフライをどう扱うかがひとつの課題になります。ある人は、フライを覆って、なにか別の形に見せようとします。またある人は、フライだけでなくほかも高くしてフライだけが突出しないようにするようにします。
しかし、こうした方法は、つまりは必要最低限の大きさのフライを外から包み込むわけですから、たしかに形に違和感がなくなるかもしれないけれど、その一方で、現実の日照や視界の遮蔽という点ではマイナスに働きます。
そこで、ぼくたちは、そういういわば「カムフラージュ」ではなく、必要な大きさのフライの形のままで扱うことにしました。

ところで、日照については、都市計画法によって指定された地域ごとに異なる法的な規制があります。
この敷地の場合だと、敷地北側に規制の緩い「近隣商業地域」が広がっていますが、そこを除いた大部分の隣接地は「第一種中高層住居専用地域」です。
「第一種中高層住居専用地域」とは「中高層住居の良好な住環境を守るための地域」のことです。都市計画法で指定される住居系地域は全部で7種類あって、「第一種中高層住居専用地域」は環境への配慮が厳しい方から3番目の地域です。

もちろん、「第一種中高層住宅専用地域」での日影規制を守らなければなりません。

しかし、この日影規制、若干、ややこしいルールです。
まず、敷地の境界線(道路に面するときは、その道路の中心線)から5m外側に線を引きます。この線を敷地一周まわせば、敷地より一回り大きい領域が仮想されます。この領域を「敷地5m外側までの領域」と呼んでおきましょう。
これとは別に、敷地の境界線(道路に面するときは、その道路の中心線)から10m外側に線を引きます。この線を敷地一周まわせば、敷地より一回り大きい領域が仮想されます。この領域を「敷地10m外側までの領域」と呼んでおきましょう。

日影規制は、この2つの領域それぞれについて、それぞれ別の次の条件を満たすことを求めています。
1)冬至の日に、5m外側までの領域で、地面から4m上において、日影になっている時間が4時間を越えてはいけない。
2)冬至の日に、10m外側までの領域で、地面から4m上において、日影になっている時間が2.5時間を越えてはいけない。

一年でもっとも日が低く、影が長い日が冬至です。このもっとも条件の悪い日に、敷地の外にまったく影を落としていけないというのは、いくらなんでも無理な注文ですから、この法律は、こう言っているわけです。
1)もっとも条件の悪い日でも、せめて敷地の外側5mまでは、高さ4mのところで、日が当たらない時間が4時間を越えないようにしなさい。
2)もっとも条件の悪い日でも、せめて敷地の外側10mまでは、高さ4mのところで、日が当たらない時間が2.5時間を越えないようにしなさい。

でもぼくたちは、この規制では甘いと考えました。
理由は、まさに池田さんが書かれていることです。
東側に建物ができれば、日の出の光はどうしたって遮られます。
しかし、(たぶん)池田さんがお住まいの家は「10m外側までの領域」に入ります。
法律は、日照が2.5時間減ることを許します。
しかし、本当にそれでいいのか、と思いました。

それでぼくたちは、法的な規制をベースに、それを自主的により厳しい基準にアップグレードして、それを達成することを目標にしました。その基準というのは、つまり、

もっとも条件の悪い日でも、高さ4mのところで、2.5時間、日照時間が減る場所を、敷地の中だけに留めよう

というものです。
もちろんそうであれば、もっとも条件の悪い日でも、高さ4mのところで、4時間、日照時間が減る場所を、敷地の中だけに留めることができます。

現在の案で、この目標はほとんど達成されています。
ほとんどというのは、(もちろん法規制の許容範囲内ですが)東側、北東側、北西側のほんの一部だけ、敷地境界線を越えているところがあるからです。
(因みに池田さんがお住まいの西側団地に関しては目標をクリアしています。)

この調整、正直なところ、かなり限界に近いところまで来ています。
なにせ、東、西、北とも、もうぎりぎりのところまで来ているからです。

でも、今後も、少しでも目標に近づけるよう努力しようと思っています。